【事例でわかる】なぜ遺言が必要か?「法定相続」より「自分の意思」を優先すべき本当の理由

行政書士米田耕太郎事務所 Administrative scrivener Komeda Kotaro Office

はじめに:遺言書は「お金持ち」だけのものではありません

「うちは普通の家庭だから、遺言書なんて大げさだ」と思っていませんか?

しかし、実務の現場で起きている“争族(相続トラブル)”の多くは、決して資産家ではない一般的なご家庭で起きています。

家庭裁判所の統計によれば、遺産分割で揉めて裁判所が介入したケースの約77%(約4分の3)が、遺産総額5,000万円以下のご家庭です。

遺言書がない場合、あなたの財産は法律が定めた一律のルール(法定相続)で機械的に分けられます。

しかし、法律はあなたの家族関係や、これまで積み重ねてきた人生の背景までは考慮してくれません。

今回は、なぜ法律任せにせず「自分の意思」を形にすべきなのか、その理由を解説します。

「法律」はあなたの家庭の事情を考慮してくれない

法定相続は、誰に対しても公平になるよう作られた画一的なルールです。その反面、個別の事情は一切考慮されません。

  • 実際によく起こる「困ったケース」:
    • 不動産トラブル: 財産の大半が自宅のみの場合、法律通りに分けるために「家を売却して現金化する」しかなくなり、同居していた家族が住む場所を失うリスクがあります。
    • 介護の努力が反映されない: 献身的に親を支えた長女と、長年音信不通だった長男。法律上は「全く同じ取り分」になるのが法定相続です。

こうした「法律の限界」や「制度の隙間」を埋め、大切な人を守れる唯一の手段が、あなたの意思を記した「遺言書」なのです。

遺言書がもたらす「3つの絶大なメリット」

① 家族を「話し合いの苦しみ」から解放できる

遺言書がないと、相続人全員で「誰が何をいくらもらうか」を決める遺産分割協議(家族会議)が必須となります。

仲の良い兄弟でも、お金が絡むと感情が衝突し、一度壊れた関係が二度と戻らないことも珍しくありません。あなたが最初から分け方を決めておくことは、家族への「最後の優しさ」です。

② 手続きの期間を「数ヶ月〜1年以上」から大幅短縮

遺言書がない場合、出生から死亡までの戸籍をすべて集め、相続人全員の署名と実印を揃えなければなりません。

意見が一人でも合わなければ、銀行口座の解約すらできず、手続きが1年以上停滞することもよくあります。

遺言書があれば、これらのプロセスの多くを省略でき、残された家族の精神的・時間的負担を劇的に減らすことができます。

③ 「法律の枠」を超えて想いを届けられる

  • 籍を入れていないパートナー(内縁関係)
  • 親身に介護をしてくれた「息子の妻(嫁)」
  • 応援したいNPO団体彼らは法律上の相続人ではないため、遺言書がなければ1円も受け取ることができません。あなたの感謝を形にできるのは、遺言書だけです。

「最後の手紙」が家族の納得感を生む

遺言書には、財産の分け方だけでなく「付言事項(ふげんじこう)」というメッセージを残せます。

「長女は最期まで介護をしてくれたから、この家を託したい。長男には現金を残すので、兄妹仲良く過ごしてほしい」

なぜこのような分け方にしたのか。その「理由」と「感謝」をあなたの言葉で添えるだけで、相続人は納得感を持って受け入れることができます。これは法律の条文には書けない、あなただけの「家族へのラブレター」です。

※重要な注意点:遺留分(いりゅうぶん)について

遺言で自由に財産を指定できますが、配偶者や子供などの相続人には、法律で守られた最低限の取り分(遺留分)があります。

これを無視した内容にすると、かえってトラブルを招く恐れがあります。遺留分も踏まえた「設計」が、本当の安心への近道です。

ご参考:遺留分とは?遺言書でも奪えない「最終防衛ライン」の権利をわかりやすく解説!

Q&A:心のハードルを下げてみませんか?

一度書いたら、もう変えられない?

いいえ。 何度でも書き直し可能です。まずは今の気持ちを「仮」で書くだけでも一歩前進です。

管理が難しそう。紛失や改ざんが怖い。

ご安心ください。 最近では、法務局で遺言書を安価に預かってくれる便利な制度(自筆証書遺言書保管制度)も始まっており、以前よりずっと手軽に、安全に遺せるようになっています。
ご参考:【法改正対応】自筆証書遺言のルールが激変!新制度で安心できる人・危険な落とし穴

まとめ:最高の相続対策は「争いのない未来」

遺言を書くことは、人生を終わらせる準備ではなく、「残された家族がこれからも安心して暮らすための設計図」を作ることです。

法律にすべてを任せるのではなく、あなたの大切な財産を、あなたの大切な人のために。

「まだ早いかな」と思える元気な今こそ、あなたの「意思」を形にしてみませんか。

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