遺産分割協議はなぜ必要?相続人全員の同意を円滑に得るための秘訣

行政書士米田耕太郎事務所 Administrative scrivener Komeda Kotaro Office

「うちは仲が良いから、話し合いなんてすぐに終わるはず」

「財産といっても自宅と少しの預金だけ。揉める要素なんてない」

相続が発生した際、多くの方がそうおっしゃいます。しかし、現実はどうでしょうか。実は、家庭裁判所に持ち込まれる相続トラブルの約3割は、遺産総額1,000万円以下のケースです。

トラブルの引き金は「資産の多寡」ではなく、実は「情報の不足」と「話し合いの進め方」にあります。

今回は、2024年4月から始まった新ルール(相続登記の義務化)を踏まえ、家族の絆を壊さずに円滑な合意を得るための秘訣を、行政書士の視点から分かりやすく解説します。

そもそも、なぜ「遺産分割協議」が必要なのか?

亡くなった方の財産は、亡くなった瞬間に相続人全員の「共有財産」となります。これを具体的に「誰が、何を、どれくらい受け取るか」を確定させる手続きが、遺産分割協議です。

なぜ、放置せずにこのプロセスを完了させる必要があるのでしょうか?

  • 不動産の名義変更(相続登記)が義務化されました2024年4月より、不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記をすることが義務付けられました。正当な理由なく放置すると、10万円以下の過料(罰則)の対象となる可能性があります。「とりあえずそのまま」が許されない時代になっています。
  • 「共有」のままだと身動きが取れない不動産を共有状態にしておくと、将来の売却やリフォーム、あるいは次の代の相続が発生した際に、権利関係が複雑化し、問題が雪だるま式に膨れ上がります。
  • 銀行預金の払い戻しに必須銀行預金の解約には、原則として「遺産分割協議書」への全員の署名・実印での捺印が必要です。これが揃わない限り、葬儀費用の支払いなどの例外を除き、多額の資金が凍結されたままになってしまいます。
  • 相続税の「特例」が受けられなくなるリスク「配偶者の税額軽減」などの節税効果が高い特例は、申告期限(10ヶ月)までに分割が決まっていることが原則です。話し合いが長引くと、本来払わなくて済んだはずの税金を一時的に立て替えることになり、家計に大きな負担がかかります。

円滑に同意を得るための「3つの秘訣」

家族会議を「感情のぶつけ合い」にしないためには、事前の準備が8割です。

① 「情報の透明性」を100%にする

「隠し財産があるのではないか?」「一部の人だけが情報を握っている」という疑念は、不信感の最大の原因です。

  • 預貯金の残高証明書
  • 不動産の固定資産評価証明書
  • 過去の生前贈与の記録これらをデータや書面で「見える化」し、全員が同じ土俵で話せる環境を作ることがスタートラインです。

② 各自の「寄与」と「想い」を否定せずに聴く

相続人には、それぞれ言葉にできない想いがあります。「親の介護をこれだけ担った」「自分は家を建てる時に援助をもらっていない」など、法律(法定相続分)だけでは測れない感情に、まずは耳を傾ける時間を設けてください。

③ 「出口」を見据えた選択肢を提示する

「どうしたい?」と白紙で聞くのは逆効果です。

「実家を売却して現金で分ける案」「一人が家を継ぎ、代償金を払う案」など、具体的な2〜3の選択肢を用意しておくと、議論が建設的になります。

「遺言書」があれば、この苦労は不要だった?

ここまで読んで「準備が大変そうだ……」と感じた方も多いはずです。

実は、有効な「遺言書」が一枚あれば、原則として遺産分割協議は不要になります。

亡くなった方の意思が明確であれば、残された家族が「誰が何を言うか」で悩んだり、印鑑をもらいに回ったりする負担を劇的に減らすことができるのです。もし、あなたが「残される家族に苦労をかけたくない」とお考えなら、今すぐ遺言書の作成を検討することをお勧めします。

お問い合わせ

「何から手をつければいいか分からない」「どのような分け方のパターンがあるのか知りたい」 そんな時は、相続手続きの専門家である当事務所をご活用ください。

当事務所では、円満な相続を前提とした「遺産分割協議書」の作成はもちろん、法的な根拠に基づいた客観的な分割案の提示(シミュレーション)を通じて、ご家族全員が納得できる着地点を見つけるためのサポートを行っております。

※すでに相続人間に激しい紛争が生じている場合や、特定の相続人との交渉をご希望の場合は、弁護士のご紹介を含め、状況に応じた最適な解決策をご提案いたします。

追記:行政書士からのアドバイス

相続は「法律」の問題であると同時に「感情」の問題です。当事者だけで話し合うと、どうしても昔の恩讐や感情が噴き出しがちです。行政書士が「交通整理」として介入することで、驚くほどスムーズに解決するケースも少なくありません。